2011年12月09日

右、左、右、左・・・・・


ある森の中。
すごく広い湖があった。
ひょうたんのような形の湖で、
湖面には赤や黄色の木々を映し出し
澄んだ水は透明に輝いている。

森の中にはやんちゃ盛りのシマリス君が
忙しそうに走り回る。
冬眠を前に木の実たくさん集めているようだ。
そんなある日の出来事。

「湖の向こう岸の木の実が、極上のおいしさらしいぜ。」

そんな噂話がシマリス達の間で持ち上がった。

どこからともなく噂を聞き付けたやんちゃ盛りのシマリス君。
考える間もなく湖の周りをぐるっと回って
極上の木の実とやらを探しに出かけた。


ところが、遠い、遠い。
行けども行けども、全然向こう岸にはたどり着かない。
さすがにやんちゃ盛りのシマリス君も疲れてきた頃、
やっとのことでたどり着いた。

(どこだ?その極上の木の実とやらは・・・)

休憩する間も惜しんで手当り次第に木の実を探して試食していく。

(おっ、たしかにこっちの木の実がうまいぞ!)

確かめると同時に一気に頬袋の中に木の実を詰め込む。
欲張って、めいっぱい詰め込むと、
シマリス君の顔は、ぽよ〜んと大きく膨らんだ。

(よし、あとは帰るだけだ。)

ところが何を思ったか、湖のほうを考え込んだ表情で眺めてる。
そして意を決したように、湖に飛び込んだ。

(うわぁ、うわぁぁぁぁ、溺れるぅぅぅ)

慌てて岸へ戻ってカラダをブルブルっと震わせた。
どうやらひょうたんのクビレの一番狭い所を渡ろうとしたようだ。

それを見ていた、白鳥が向こうからやってきた。
「どうしたんだい?」
「向こうまで渡ろうと思ったんだけど沈んじゃってさ・・・」
「君はリスだろ?」
「泳げないから渡れないよ」
そう言うと白鳥は去っていった。

それを見ていた、しらさぎが向こうから飛んできた。
「どうしたんだい?」
「向こうまで渡ろうと思ったんだけど沈んじゃってさ・・・」
「君はリスだろ?」
「飛べないから渡れないよ」
そう言うとしらさぎは去っていった。

(ここが渡れれば近くなのになぁ)

諦めきれずにいると、どこかから声が聞こえた。

「どうしたんだい?」

(今度は誰だ?姿が見えやしない)
(まぁいいや、聞いてみよう)

「向こうまで渡ろうと思ったんだけど沈んじゃってさ・・・」
「君はリスだろ?」
「すごく早く走れるから渡れるよ」

「え?渡れる?」

「どうやったら渡れるんだい?」

「渡り方を教えてあげるよ」
「水の上にそっと右足を出すんだ」
「その右足が沈まないうちに、左足を出す」
「もちろん手も同じさ」
「どんどん早く、右、左、右、左・・・・・」
「どうだい?渡れそうだろ?」

その声を聞き終わる間もなく
シマリス君は湖に飛び込んだ。

「右、左、右・・・・」

掛け声に合わせて手足を必死で動かした。

あわぁわわぁぁ・・・・

(沈むじゃないか!)

必死に戻ってたどり着く。

(もうちょっと早くしないといけないのかな?)
(よーし、もう一度)

1度や2度ではなく、何度も何度も繰り返した。
「渡れる」の言葉を信じて。
誰の言葉か、正しいのか、そんな判断をすることもなく。
ただ、渡ることを試みた。

夕日が沈みかけた頃、
シマリス君はついに力尽き、ゴボゴボっと沈み意識を失った。

その姿をずっと見ていた白鳥。
シマリス君を助けようと背中に乗せ向こう岸まで連れていった。
何も言わず、岸にシマリスを降ろし優雅にどこかへ行ってしまった。


翌朝、太陽の光を浴びて目を覚ましたシマリス君。

(おっ、渡れた!!!!)

そう信じて疑わなかった。

「おーい、あっちの木の実は極上だぞ〜!」

そう叫びながらシマリス君は仲間に自慢しに戻って行った。





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posted by 岡田昌己 at 21:12| Comment(4) | TrackBack(0) | 気の向くままに・・・ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今の私だ
行こうとする気持ちばかり。自分は誰なのかみることもなく。

気付こうよ、私。
Posted by 奈緒子 at 2011年12月10日 19:33
奈緒子さん

奈緒子さんはシマリスくんみたいなのですか?

シマリスくんは最後にはカタチはどうであれ、
向こう岸まで辿り着いたのですよね。

Posted by 岡田昌己 at 2011年12月12日 19:50
そんな捉え方があるんだ(o^∀^o)
Posted by 奈緒子 at 2011年12月12日 22:02
奈緒子さん

いろんな読み方が出来ますよね。
捉え方によってずいぶん違う印象になりますね。

Posted by 岡田昌己 at 2011年12月13日 19:55
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